2018年8月20日月曜日

高齢者図書室

1.「本の味」。群よう子著。多分書評のコラムで連載されていたものをまとめたものだろうが、その対象になるジャンルを越えた面白いものが多い。この本で興味をもったものもいくつか出た。そのひとつがナイチンゲールの「看護覚書」。   病院内デイルーム所蔵。

2.「ブラックジャック(抄)」。もちろん手塚治虫著。ストーリーの手抜きが見られる1編も見られるが、かなり完成度の高いものも含まれている。    病院内デイルーム所蔵。

3.「怪しい来客簿」。色川武大著。幻想文学と呼んでいいものじゃあないだろうか?一般的市民生活から遠くかけ離れ、本人の幼少期体験から続く破滅志向の青春時代は、とてもじゃあないが学校の推薦図書なんかには選ばれないシロモノであると思う。
 が、俺は若い時こそ、坂口安吾や太宰治とともに読むべきものだと感じた。開高健より格好悪く、やたらに「悔」をひけらかすあたり実に人間味溢れ共感するんである。
 最終章が著者の入院から大騒動になる手術などの実録闘病記は入院した俺には絶好のタイミングだった。

4.「ものぐさ精神分析」。岸田秀著。杉浦日向子さんの本の中で名前が見えたので古本屋で探し当てた本である。色川さんの5歳下で現在85歳。40年前の著書である。
 偶然だが色川さんとの共通点が多くとても面白かった。自分に正直であろうという、その勇気には尊敬の念を抱いてしまう。俺も人生やり直したいなんて気が頭をよぎったぜ。

5.「沖縄シュガーローフの戦い・米海兵隊地獄の7日間」。ジェームス・H・ハラス著。戦死者から物を盗む、戦闘中泣き出すなどの描写が生々しく、その痛みが伝わってくる。
 形式はインタビュー集である。戦後インタビューを受ける側の意図も加わってしまうので、必ずしも事実だけとは限らないが、それでもその恐怖や狂気は十分伝わる。
 沖縄に参戦した兵士及びその家族、そして多くの米国人が思う「沖縄基地問題」が、日本人と同じ土俵上で考えること自体が無理だということがあらためて分かった。これらを考慮して冷静に考えようとすることはかなり困難なことだと思う。
 ずいぶんいろいろな用語を見た。「ゼロイン」、「ジャップ、ニップ」、「アムトラック」、「黄燐弾」、「BAR」等々。
 丘の奪取作戦の指揮に当たったシュナイダー将軍の更迭問題はまるで乃木希典とおんなじじゃあないか。歴史は繰り返されたのだ。           「医王コレクション」所蔵。

6.「東京百話」の中から。昭和58年の東京を描いたエッセイの中で、すでに南千住あたりでも「東京歴史散歩」の一団が闊歩している様子が記されていた。ちょうど俺が故郷である東京を茨城から憧れの眼を持ち始めた頃でもある。

7.これは読んでいないのだが、向田邦子の「家族熱」、「桃から生まれた桃太郎」の2冊。知らないタイトルだったんでめくってみたら両方共脚本を別の人が小説化したものであることがわかった。が、コレってアリですか?      病院内デイルーム所蔵。

8.「無用庵隠居修行」。海老沢泰久(1950年生まれ)著。茨城県出身者であることから冒頭の1篇を読む。池波正太郎の「剣客商売」をモチーフにしてることが一目瞭然で、しかも都合の良い展開になりすぎていて苦笑せざるを得ない。主人公は自分を投影するように54歳にしてある。が、著者は59歳で鬼籍に入ってしまっていた。短い隠居だったんだな。  病院内デイルーム所蔵。

9.「ホカベン・僕達の正義」。中島博行(1955年生まれ)著。同じく茨城県出身である。偶然が重なるもので、病院内デイルームには漫画ばかりで小説やエッセイものは殆ど無く、その中から二人も茨城県出身がいるとはな。で、小説は新人弁護士の活躍?を描いたものでまるでテレビドラマの台本のようである。意識の動きなどを描くだけの才能なし、と見たり。   病院内デイルーム所蔵。

10.「世界をまどわせた地図」。エドワード・ブルック・ヒッティングマーチ著。実に楽しい本である。冒険家や探検家の嘘はまるで古代史捏造した日本の歴史学者と通じるものがあるな。
 奇形人間のビジュアルも面白い。パタゴニア人を3mの巨人と見た当時の冒険家は現在よりもせが低く、パタゴニア人は実際には1.8mだったらしく、探検家は1.6mだった、とさ。
 現代のように上層から俯瞰する手立てがなかった時代の想像力がいかに強いものであったか。驚きである。          「医王コレクション」所蔵。

11.「古代ギリシア・ローマの料理とレシピ」。アンドリュードルビー他著。
 いきなり、だれでも知ってることなんだろうが「ネクター」の語源が「ネクトル(=神酒)」を初めて知った。
 面白いエピソードがいくつも紹介されており、その中で印象に残ったもの。ギリシア時代の酒宴でのアペリティフに赤ワインとはちみつと水で作られた飲み物を供されていたところに興味を持った。これは「本飲み?」に入る前に客が酔っ払わないようにするためだとか。これは沖縄は宮古島でいうところの「おとーりー」じゃん。
 レシピには「オレガノ」の出番が多い。我が庭では厄介者の扱いを受けている。

 ローマ時代では「カトーさん」が面白い。役人のお偉いさんでありながら商才もあり、農園を営み、その運営法を書いた「農業論」までも残している。その中からのレシピも紹介されている。で、その時代から農園が流行し始めたらしい。
 ワインに関する記述も多く、その起源と流れについての古代史は面白い。食についてのこうした本は飽きが来ることなし。             「医王コレクション」所蔵。

12.「私の沖縄食紀行」。平松洋子著。飲食の経験のないものも多く掲載されており実に興味深いものだった。沖縄食は即実生活に取り入れることができるような下地ができているんで、早速いくつかのレシピを試したいものである。

13.「二十日鼠と人間」。ジョン・スタインベック著。6章からなる戯曲のようである。解説によれば演劇の台本としてのイメージで書かれたそうなので、俺の感想は外れなかったわけだ。
 昭和28年にこの文庫本の初版が出版されているのを見て読み始めた。頭の弱い大男のその馬鹿力が生み出す悲劇。背景の流れ者の労働者社会の方に興味があるが、ここではそこはあっさり描くことにとどまっている。この後の「怒りの葡萄」で本領発揮されるというわけである。
 すずかけ=プラタナス、むさきうまごやし=アルファルファであることを知った。
                                      病院内デイルーム所蔵。

10日間の入院で結構読めたな。TV&ラジオなしもたまにはいいもんだ。

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