2018年8月19日日曜日

別冊・映画の友 高齢者編

1.「橋」。1959年ドイツ映画。
   カメラワークが非常よく、演出のテンポも良い。一部の場面転換ではうまい!と思わず言ってしまった。みずみずしい青春群像は「アメグラ」のような代表作が後で出てきたが、この時代でこれだけのものが作られていたとは驚きだった。
 脇を固める役にも丁寧な描き方されている。ナショナリズムに翻弄される若者が痛々しい。先日観た「ヒトラーの忘れ物」も衝撃的だったが、60年前の作品にはもっと驚かされた。

2.「魚が出てきた日」。1967年ギリシア映画。
  この映画公開当時映画にはまりはじめた頃だ。特にアメリカン・ニューシネマが台頭していた頃で、結構真面目な映画を追っかけてたような気がする。その中でこうしたコメディータッチの作品を敬遠していたフシがあり未見である。
 脚本が良く出来ており、時代を感じさせない音楽も非常に良い。観光ブームを茶化したり、島に降下された放射能兵器を巡ってのドタバタはだれずに最後の衝撃シーンで幕となる。怖い話だ。「食う人々」のチェリノブイリをルポした記事を思い出した。

3.「ランジェ公爵夫人」。2008年フランス映画。
   「オネーギンの恋文」や「エイジ・オブ・イノセンス」を思い出した。上流社会を舞台に、これは男側からすれば、不倫のかけひきの失敗談である。 この作品の監督はヌーベルバーグブームで活躍した人だということだ。
 ルキノ・ヴィスコンティといい、マーチン・スコセッシといい、黒澤明といい晩年の監督はセットや衣装にやたらに金をかけた作品を作りたがるようだ。

4.「パリは燃えているか?」。1966年フランス映画。
 この中で使われたセリフで面白いのがあった。俺の名は「アランだ。ロンドンから来た」。

 後半で前半で活躍したレジスタンス幹部が描かれていない点に不満が残る。融通の効かないパットンを演じるカーク・ダグラスが適役だ。「パットン大戦車軍団」も彼でやって欲しかったな。彼の「大いなる戦場」も確か頑固な将軍?役だったような気がする。
 アンソニー・パーキンスとイブ・モンタンはこの作品の前に共演しているが今回は絡むシーンがないままに死んでしまう。ベルナール・フレッソンやジャン=ルイ・トランティニャンが目立たないちょい役で出てた。最後のクレジットで確認できた。これもちょい役のジャン=ピエール・カッセルは今売れっ子となっているヴァンサン・カッセルのお父さんだ。
 渋谷全線座で観たのが70年ころだっただろうか?「影の軍隊」のようなシリアスなものを優先に観ていたので、ちょっと緩めのこの作品に印象は薄いし、今回そのゆるさを再確認した。

休憩.........BBCの発表した2000年以降のベストムービーの1位は「マルホランド・ドライブ」、4位に「千と千尋の神隠し」が入り、ウェス・アンダーソンやクリストファー・ノーランが複数入ってたな。
イギリス人の好みは俺とは合わないようだ。

 5.「二世部隊」。1951年アメリカ映画。戦果で国内の日系二世たちの立場が良くなることを背景に戦地に赴く兵士の群像劇。人種差別などの描き方はオーソドックスで、コミカルさとシリアスさがうまく混合されているのは当時の手法だったらしい。
 丘での攻防や迫撃砲の使い方、地雷などの緊張感は当時の作品でもかなりの迫力あり。バン・ジョンソンが若い!

 6.「ライフ・イズ・ミラクル」。2004年セルビア映画。エミール・クストリッツァ監督のもので二度目なので感想文省略。

 7.「幸せになるためのイタリア語講座」。2000年デンマーク映画。
  よくあるパターンの大人の恋愛劇。日本語のタイトルが全てを表しちまってる。劇中、どじなパン屋の店員が包んでた「揚げパン」がすごく気になった。

8.「 魔笛」。オペラの翻訳でミュージカルにしたもの。最近「オリエント急行」にリメイクで話題になったケネス・ブラナーが監督した2006年イギリス・フランス合作映画。

 出演者にデブがいない。140分は長すぎたな。オペラに興味が無いのでこういう機会がないと絶対に見られないものだ。主演に絡む母娘のキャストが明らかにミスなんだが、意外な展開になって最後は納得した。さんざん世界を荒らしまわった国(イギリス)がこういう作品を作るにはやはり鼻歌交じりで描きたいんだろうか?そういえば、気になってた作品がミュージカルだったんで見なかったものもあり、それがイギリス映画「素晴らしき戦争」1969年作品。この機会に145分頑張ってみるか?

9.「黄色い星の子供たち」。2010年フランス映画。パリは燃えてなかったんで起きた悲劇で、観るのが辛い作品だ。収容所とヒトラーを始めとする上層部の対比は類型的で観るものはないし、結果もわかっているものだけになおさらである。
 ナスターシャ・キンスキー似の看護師役の女優が良かった。終盤のドビュッシーの月の光が胸に刺さる。

10.「ブルーマックス」。1966年イギリス映画。だが、ドイツ軍の話であり、そのドイツ人は全員英語で会話する。ちょっと違和感は否めないな。
 好感持たれぬ功を焦る主人公をジョージ・ペパードが好演している。こうした好かれない役が主人公のものでは「アラビアのロレンス」と同系列になるのかな。更に彼を操り国民の戦意を鼓舞しようとするしたたかなジェームズ・メイソンが良い。 
 監督のジョン・ギラーミンは寡作で、キングコングなどが有名だが、俺は「レマゲン鉄橋」のほうが出来がいいと思う。先の「橋」と2本立てでもいいかもしれない。
 劇中、ウルスラ・アンドレスが所望する「ピンクシャンペン」ってあの有名な「あれ」のことかな。ジョージ・ペパードが飲む「シュナップス」は色がついていたけど、調べたら一部に色付きもあるそうだ。
 主人公がリヒトホーフェンを助ける場面は創作なんだろうが、彼の方は実在の人物で映画(「レッドバロン」)にもなっている。騎士道から無差別殺戮への変換期を描いていたと思うが、その葛藤のやりとりはこの作品でも描かれていた。

 11.「ラ・マルセイエーズ」。1938年ジャン・ルノアール監督フランス映画。

 1789年バスティーユから脱獄した者たちを中心に1792年パリでフランス革命を起こす顛末を描く。革命派と権力側は不公平なく描く脚本はいい。2時間ちょっとでまとめたのもいい。
 これを参考に日本でも明治維新を二時間ちょっとで描いて欲しいものだ。それができれば「日本一番長い日」なんか90分未満で十分だろう。
 それにしてもフランス革命ではオーストリアと組んだものの、その後何度となくドイツ(プロイセン)はパリを破壊しようとしてるんだから、よほどパリが嫌いなんだろうな。

0 件のコメント:

コメントを投稿